【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)

「ゴミが入ったんじゃないか?」

水面からは課長の手が伸びてきた。顎をつかまれ、上を向かされる。もう一方の手で頬を包まれた。

「見せてごらん。右? それとも左?」
「ち、違うんです……あの……」

瞳をのぞかれる。ゴミが入ったわけではないと伝えたのに、課長の手は離れる様子がない。熱い視線に佳織の心臓は高鳴る一方だ。真剣に目を見る課長に申し訳なさと、そして別の感情が佳織の心にこみあげて来る。
(好き……)
このまま告白してしまいたい。たとえダメでも一度だけこの胸に包まれたい。でもそれをするわけにはいかない。
佳織は課長の目を見つめる。課長の瞳もまた、揺れていた。
(どうして?)

「真船。そんな目をして。あおってるのが分からないのか?」

そのあとに起こったことは一瞬のことだった。
佳織は近づいてくる課長の顔に驚いた。佳織の唇に触れたのは冷えた課長の唇。一瞬交わされたキス。
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