【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)

着替えてロビーに出ると課長はすでに支度を終えて立っていた。

「真船、食事にいかないか?」
「今夜は食べずに帰ります。また酔ってご迷惑おかけするかもしれませんし」
「俺は構わない。真船と一緒にいられるなら……あ、いや、そういう意味じゃない。もし泊まるような事態になっても何もしないと約束する。純粋に君といたいだけだから」

ほんの少し、真佐課長の頬が赤くなる。それを見た佳織も同じように頬を染めた。
(私も一緒にいたい)
佳織は課長の目を見つめる。
(でも朝帰りなんてしたら……萌絵が……)

「でも。着替えもメイク道具も持ってきてなくて。女の子って鋭いんです、この前も気づかれて、詮索されて」
「そうか。じゃあまた次の機会に。駅まで送る」
「だ、大丈夫です。すぐそこですから」
「いや。ダメだ。さあ」

再びつながれた手。その手はぐいぐいと佳織の手を引く。ビルを出、歩道を進む。夜風が気持ちいい。今日の営業を終えたデパートのショーウィンドウには白を基調にした服が飾られている。そういえばホワイトデーは明日だ。
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