【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
連れていかれた先は花屋だった。ショーウィンドウの向こうには色とりどりの花が咲き誇っている。バラ、ラナンキュラス、ラン。課長はスタッフを見つけると、ガーベラとスイートピーの花束を、とお願いした。
「課長?」
「真船、君に贈る。憧れなんだろう?」
「いえ、その……。催促したわけではないんです。ホワイトデーにもらうならっていう例えで。それに私、課長にチョコを渡してませんし、いただくわけには……」
「いいんだ、俺が贈りたいんだから」
スタッフが佳織に色味を聞いてくる。佳織はおずおずとピンクと答えた。足元に並んでいたバケツからガーベラたちが引き抜かれていく。そこに棚に並んでいたスイートピーたちが差し込まれ、更に紫のスターチス、白のカスミソウ、濃いピンクのチューリップが足されていった。花たちはあっという間に丸みを帯びた半球体になり、同じくピンクの不織布にくるまれた。仕上げにシャンパンゴールドのリボンが巻かれ、それを課長は代金と引き換えに受け取った。