【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
……ここは。
深い眠りから目覚めたように、頭が重く感じた。同じく手足も重い。天井は見慣れた自宅のものではなく、真っ白な清潔感のある石膏。その視界の隅にはカーテンレールと点滴の袋。
(病院……?)
ゆっくりと視線を巡らせる。無機質なベージュのサイドボックス、稼動テーブル。消毒の匂いもわずかにした。やはり病院のようだ。閉められたブラインドからわずかに紫色の空が見えた。明け方だ。
(えっ?)
その窓ガラスの手前に座っているスーツ姿の男性。
(真佐課長……?)
腕を組み、足を組み、うつむいている。寝ているようだ。こくりこくりと頭が揺れている。
(私……なぜ病院に?)
(それに真佐課長はどうして?)
そんな思考を巡らせる。昨夜、ジムに行き、マシンで走った。萌絵のことを考えたくなくてひたすらに走った。ペースを上げて、キツくなって、それでも走っていたくて。
そうだ、視界が白く光って……。
(それで病院に?)
としても真佐課長がいるのかが分からない。
そんなことを考えていると、真佐課長のアタマが大きくて触れた。椅子から落ちる……!
「課長!」
「……ん?」
すんでのところで課長は目を覚ました。