初恋をもう一度。【完】
「うわー、まじで耳いいんだ! それに習ってないのに弾けちゃうし、すごいね」
「そ、そうなのかな……」
「だって悲愴、かなり難易度高いのに」
こんなお遊びのピアノなのに、一生懸命褒めてくれて、嬉しいけれど申し訳ない。
「あのね、難し過ぎて最初しか弾けないの……それに、今弾いてた所もすぐ手が痛くなっちゃうし……」
わたしがごにょごにょ言うと、
「左手のトレモロ? 俺が教えてあげよっか?」
鈴木くんはニッと笑って、机からぴょんと降りた。
「え、教えてくれるの?」
「うん、ちょっとやってみて」
わたしは左手をオクターブに開いて、小指と親指をできるだけ頑張って交互に叩いた。
「あー、うん。それ、手痛いよね?」
そう言った鈴木くんは、急に、わたしの手首を上からぎゅっと掴まえた。
「……!!」
びっくりして、心臓が飛び出るかと思った。
左の手首が、どんどん熱くなる。
ほっぺたもすごく熱くなっていく。