僧侶とホストと若頭、３つの顔に揺れる恋

あたしと親父の会話が、そんな悠長な会話ではないことを、明らかに感じとっている鋭い目だった。

「お嬢。明日からお嬢にも護衛をつけろと、総長からのお達しです。周囲には気づかれぬよう、護衛いたしますので、お嬢は普段どおりにおふるまいください」

沖永は表情を一切崩さずに言う。

「不審な動きがあっているんですか？」

沖永が正直に話すはずはないと思いながら、一応聞いてみる。

「お嬢はいついかなる時も、総長の直系というお立場をお忘れなきように」

「はい」

あたしは短く答えて、やっぱりはぐらかされたと思い早々に、退散し神社に戻った。

親父の命令で、年明けから神社で修行をさせられて早、３ヶ月が過ぎた。

任侠の世界とは１８０℃違う世界のしきたりに慣れるのは容易なことではなく、あたしは未だに戸惑っている。