僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「万が一、剣を抜かれていたなら大岡さまの手首を弾がかすめていたでしょう」

悠斗が抑揚のない調子で言った。

「……面白いことを言う奴だのう」

大岡が腹を揺らして、笑い飛ばした。

笑い出す前、数秒の間があった。

ーー大岡、笑っている場合か。悠斗は、てめえが剣を抜いていたら本気で、手首を撃っているぞ

大岡にも、それは理解できたに違いない。

数秒の間は、大岡が悠斗を量りかねたということだ。

あたしは全国大会出場した悠斗の射撃の腕前を知っているだけに、抑揚のない悠斗の声音に背筋がざわついた。

総長の部屋で、親父が「あれは賢い男だ。盃を請ける時に全てを察していた」と言った意味。

あたしには悠斗の飄々とした静けさと、大岡に相対してさえも悠斗の普段通りの穏やかさが、不気味に思えた。

不気味に思ったのは、あたしだけではないかもしれない。
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