モノクロに咲く花~MadColors~
ふと、一人の男子生徒が一花の前を通る。
服装はだらしなく、襟元が開いて肌の露出が多い。スボンも
腰パン気味で姿勢が悪く、だるそうに歩いている。一花はふと、同班の彼が課題を行っているか確認しなくてはと声を掛ける。

「……み、三上君」
男子生徒はどこから呼ばれたのか分からないくらいきょろきょろして、やっと一花を見つけた。途端に
その表情が曇った。
「なんだよ」
「六限のグループ発表、準備終わった?」
「あー……そういやそんなのあったな」

三上夕夜。派手な外見通りの問題児。
一花とは家が近所の上に小学校の時も六年連続同じクラスというくされ縁。
女癖が悪く、常に彼女がいるが長くは続いたことがなかった。
学級委員をいつもさせられてきた一花にとって、問題児である三上の存在は目の上のたんこぶ。彼がい
ると纏まるものもまとまらないことが多く、一花は困っていた。
「忘れてたってことはやってない……のかな?」
「やるわけねえだろ、オレ今から彼女のとこ行くし」
「ちょ、発表はどうするの?」
「オレ多分授業サボるから。じゃあな」
まだ話し掛けようとした一花を遮って、さっさと一花のもとから離れていってしまう。一花は予想はし
ていたものの、やるせない気持ちになる。ため息をついて課題の続きをやろうとしたところ、目の前に同
じ班の男子生徒がやってきていた。なぜかにやついているので、一花は嫌な予感しかしなかった。
「班長~」
「な、なに?」

それって、今日の発表のだよな?頼む!俺の分もやって!」
「え、ちょっと……!」
その様子を見ていた同班のメンバーが私も!と便乗してきた。一花が困った顔で見ると、苛ついた表情
で応じる。
「何?他の人の分は引き受けて私はダメなの?贔屓?」
「……わかった……」
周りで様子を見ていたクラスメイトも次々に集まってきて、一花の机の上にノートを積む。一花はじっ
とその山をみつめている。
(結局殆ど私がやるのね。……昔からこんなことばかり。皆の都合のいいように扱われるだけ。やりたく
ないことは全部私に押し付けていく。課題も、学級委員も―――)
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