モノクロに咲く花~MadColors~
花は鞄からハンカチを取り出し、お手洗いに行くため廊下へに出た。あの課題の山をこなすと休み時
間いっぱいはかかりそうだったからだ。突然、遠くからはしゃいだ声が聞こえてくる。

「きゃー!宙様だ!」

かっこいい、今日も素敵……」
その様子を見て男子生徒がバカバカしい、という表情で通り過ぎる。
「宙様宙様って、バカかよお前ら」
女子生徒がキッ、と男子生徒を睨む。そしてものすごい剣幕で畳みかける。
「日本トップを争う大財閥の一人息子、常に全国模試一位の秀才で容姿端麗文武両道!いつも皆に優し
い虹橋中の完璧王子!あんたみたいな男にはわかんないわよね!」
「そ、その完璧王子がなんで公立なんか通ってんだよ」
「知らないわよそんなの!こっちはいてくれるだけで感謝よ!」
女子生徒が男子生徒を叱り飛ばすと、彼は退散した。一花は皆が騒いでいる先を、目を凝らして確認す



くからすらりとした人影がやってくるのが分かる。さっきまで騒いでいた女子達は壁に張り付いて
緊張していた。やがて彼が近づいてくると、その端正な顔立ちと上品な空気に、一花は足を止める。
壱川宙、壱川財閥の御曹司

イギリス人のクォータだと噂されている通り、
顔立ちや目の色が見ていると吸い込まれるように美しい。
スポーツも勉学もなんでも出来る上に優しいと噂されている。
(普段はクラスが遠いからあんまり会わないけど、やっぱりかっこいいなあ……。さらに頭が良くてスポ
ーツも出来て優しいだなんてすごすぎる……)
歩いてきた宙は、一花の近くに来た時にふと、一花に視線を向ける。その視線は一花のものとぶつかる。
一花は鼓動が激しくなるのを感じ、体が熱くなった。

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