魔法の鍵と隻眼の姫
「おはようございます!」

「おはようございます。ナジェス」
「おう、おはよう」

元気に挨拶したナジェスにニコリと挨拶を返すミレイアとラミンにキースは生暖かい目を向けていた。

「よく眠れましたかなミレイア様」

「はい、とっても!」

スッキリとした顔でにっこりと笑うミレイアにキースは含み笑いを浮かべる。

「いやはや、王女様がベランダから夜這いをかけるとは驚きですな」

「「えっ!?」」

ミレイアもラミンもぎょっとして目を丸くする。

「私は下の階にいて窓を開けていたもので会話が聞こえましてね。いやいや盗み聞きしたわけではないのですよ?たまたま、聞こえたんです」

固まる二人を横目に言い訳をして顎に手を当てうんうんと頷く。

「隣に飛び移ったとわかった時にはぎょっとしましたが、会話からお二人の覚悟が垣間見れたことは喜ばしい限りです。その後は二人仲良くお眠りになったようですがノアローズ国王様はお二人の間柄はお知りなのですかな?」

「え、あの!」

「いや、あれは…」

慌てる二人を見てクスクスと笑うキースはちょっと意地悪してしまったかなと思いながらもしたり顔。
たった1ヶ月でも二人は固い信頼が出来ていると確信できて安心した。
この二人なら成し得るかもしれない。

なんとか説明しようとする二人をまあまあと宥め朝食を一緒にとり出発の支度をする。
そうしてる内にフリドリード国王も到着し、先ほど慌てふためいてたラミンとミレイアは緊張からか言葉少なに眉間にシワを寄せていた。

「今から気負っていては疲れるだけだ。これからまだ迷いの森という試練が待っているのだからな」

フリドリード国王が二人を心配して声をかけた。
迷いの森はその名の通り鬱蒼とした森にいつも霧が立ち込め、森に入った人も魔物も迷路のように迷い出れなくなるという。
時にはそこに住む妖精に悪戯されることもあるとか。

「多分ノニがいるから大丈夫だと思います」

ミレイアがそう言うと髪の毛から飛び出してきたノニはくるくる周りミレイアの肩に乗るとえっへんと自慢するように胸を張った。

「おおこれは、迷いの森の妖精ですな。気まぐれに人を騙すこともあるというが大丈夫ですか?」

キースは驚くと共に懸念を示す。
一瞬ノニを見たミレイアとラミンはにこりと笑い頷いた。

「大丈夫です。ノニは大切な仲間。騙すようなことはしません」

「俺達はノニを信じてる。あなたたちも信じて欲しい」

真剣な眼差しに本当に信じきってる様子がわかる。
ノニは嬉しそうにミレイアの頬に頬擦りした。

「うむ、二人がそう言うのなら信じよう」

フリドリード国王が頷くとキースも同意してくれた。

「皆様、どうかお気をつけて…」

ナジェスを抱き心配そうな表情のアデリーに後は頼むとキースが言いナジェスに母上を頼むぞと言うとナジェスは元気よくはい!と返事をした。
ここからはラミンとミレイア、国王とキースの4人のみで出発する。
護衛で付いてきた者もここで待機となる。

「国王様どうかご無事で」

「うむ、後は何があっても昨日申した通り国を守ってくれ」

フリドリード国王も後の事を残る者に託した。

さあ、最後の試練に出発だ。
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