魔法の鍵と隻眼の姫
「な!?旅・・・?」

「二人で・・・?」

周りの皆は驚愕し言葉を失う。
王妃は青い顔をしてミレイアに駆け寄り抱きしめた。

「こ、この子は一歩も外へ出たことが無いのですよ?それをいきなり明日から旅をしろだなんて!」

「そ、そうだ、それに民衆の目に晒されたら何をされるか…」

セイラスが心配そうにミレイアを見る。
王妃に抱き締められ呆然としているようなミレイア。

「だからこその護衛じゃ」

「僕も!僕も一緒に行く!」

トニアスが声を上げる。
大事なミレイアをほとんど覚えてもいないラミンなんかに任せられない。
自分がミレイアを守るんだ!

「それはならぬ、トニアス。これはミレイアとラミンにしかできないことじゃ」

「でも!」

「よいな!決して手出ししてはならぬ!」

「ぐ…」

モリスデンの凄みに押されて勢いを削がれたトニアスは項垂れる。

「一緒に付いて行くことはできないのか?」

静かに聞いたセイラスもミレイアを守りたいのは同じだ。
首を振るモリスデンに苦虫を噛み潰した。
暫しの沈黙。

「お、おいおい、俺、まだ行くともやるとも言ってないけど?」

声を上げたラミンに皆が凝視する。

「な、何を言ってるんだラミン?」

セイラスが訳が解らないと言うように頭を振る。
肩を竦めるラミン。

「ここに来るまでにこの爺さんからだいたいの事は聞いた。言い伝えの事も聞いていたし、そこの王女様がこの世界の運命を背負わされてることも…、だが、俺には関係ない。俺に何ができると言うんだ?」

「何を言っておる?」

「鍵がどうのとか?俺はそんなもの持ってはいないし、護衛ならもっと強いやつが他にいる。セイラスとトニアスが守りたいって言うんならその二人に守らせればいいだろ?俺は訳の分からないおとぎ話に乗るのはごめんだ」

「お主!今のわしの言葉を聞いておったのか!? お前で、なくては、ならないのじゃ~!!」

モリスデンがラミンの胸ぐらを掴み間近に顔を見据え迫った。

「お、おえっ、はい~~~っ?!」

鼻が付きそうなほど迫るモリスデンに卒倒しそうなラミンは思わず返事をする。

「はぁ、今の状況をラミンはまだ理解していないようだな…」

ため息をつく王。
王妃に抱き締められていたミレイアは顔を上げると王に言った。

「お父様、ラミン様と少し、二人でお話ししたいのですが?」

「な、ミレイアこんな奴と二人でだなんて!絶対だめだ!」

トニアスが反応して叫ぶ。

「トニアス兄様、大丈夫。お庭にでも行きますから。二人でお話をさせてください」

ウルウルとした目で見上げるミレイアに弱いトニアスは渋々頷く。

「よかろう、ミレイア、行っておいで。ラミン、断りはしないだろう?」

目を細めラミンを睨む王に従わざるを得ないラミンは仕方がないと言うように肩を竦め、先に出て行くミレイアの後に付いて謁見の間を出た。

二人が出て行った後に残された者たちは一様にため息を吐く。






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