魔法の鍵と隻眼の姫
座った状態で剣を挟んで対峙した二人。
過酷な状況なはずなのに明るい声を出すラミン。
「まさか俺があんな力持ってるとは知らなかったな!俺の体に龍がいたんだぞ?俺やっぱアドラードの生まれ変わりらしい」
「ラミン…」
おずおずとラミンの顔を見るミレイアににかっと笑いかける。
「ヴァルミラにアドラードが生まれてから死ぬまで一気に映像で見せられて吐きそうになったわ。いや、あれはキツかった」
その時を思い出してか眉尻を下げ困った顔をするラミンにぷっと思わず吹き出してしまった。
それを見逃さなかったラミンは不敵な笑いを見せてミレイアは落ち着かなくなって目を泳がす。
「1200年前の失敗を繰り返さないためにもお前に頑張ってもらわないとな。この剣で黒い雲は龍と共に永遠に封印するんだ。俺を刺しても俺は絶対に死なない。約束する」
「ラミン…でも怖いわ…もし、万が一…」
優しい眼差しを向けたラミンは目に涙をいっぱい溜めて見つめてくるミレイアの手を取って両手に包みこんだ。
大きな手が冷えた手を温める。
「俺を信じろ。そしてお前自身を信じるんだ」
「でも…」
溢れた涙が手の上に落ち、ぶるぶると震える唇が剣を持つことを拒否している。
「ほら、周りを見てみろよ…」
気が付けば辺りは夜明けのように明るくなり始めていた。
赤い稲光はもう収まり全長が数十メートルもありそうな黒く長い物体が周りを飛び回っていた。
「あの黒い蛇みたいのが龍だ。アドラードの力、俺の化身とも言える」
「ほんとうに・・・」
一瞬龍の顔が横切り、ブルーグリーンの瞳と目が合った気がした。
ミレイアはラミンの瞳をまじまじと見つめる。
宝石のように輝くブルーグリーンの瞳。
この目に見つめられるのが嬉しくて恥ずかしくて好きだった…。
信じてみようと思う、ラミンを、自分を。
世界を救うためならどんな試練も甘んじて受けようと誓ったのだから。
そっと手を外し剣に触れびくっとしながらも持ってみると意外に重く、刀身は30cm程と短い。
恐る恐る持ち上げるミレイアをラミンは何も言わず見守った。
両手で持ち構えると剣から黒い霧が吹き出し一瞬で憑りつかんと負の感情がミレイアを包んだ。
「うっ!」
カランと音を立て落ちた剣。
ラミンは咄嗟に膝立になりミレイアに手を伸ばす。
「大丈夫か?」
「こんな…こんな気持ちではこの剣は使えないわ…」
一瞬で負の感情に取り込まれそうになった。
こんな剣をラミンに刺せない。
刺せるわけがない。
きっとアストラもこの負の感情に支配され思うようにいかずに失敗してしまったのだろう。
黙って暫く剣を見つめていたミレイアは剣の刃先に指先を当てスッと引いた。
「おい、何してる!」
指からにじみ出る血を見てラミンが手首を掴んだ。
「こんな剣でラミンを刺すなんてできないわ。浄化の魔法で少しでも負の感情を抑えたい」
そう言うと床に血で魔方陣を書き始めた。
モリスデンに教わった浄化の魔法。
気休めかもしれないけど何もせずにはいられなかった。
魔方陣を書上げ剣をその陣の中に置き手を組む。
「浄化の魔法を教わった時にモリ―に言われたの。思い出せ、澄み渡る青空を、透き通る風を、沸き出でる泉を、朗らかに笑う子供の声を、人を想う心を…全ては清浄の中にある…」
一心に祈るミレイアから目が離せないでいると魔方陣が光り剣が宙に浮いた気がした。
眩しく目を細めると光りは収まりその中にあった剣は黒から白銀の色に変わっていた。
過酷な状況なはずなのに明るい声を出すラミン。
「まさか俺があんな力持ってるとは知らなかったな!俺の体に龍がいたんだぞ?俺やっぱアドラードの生まれ変わりらしい」
「ラミン…」
おずおずとラミンの顔を見るミレイアににかっと笑いかける。
「ヴァルミラにアドラードが生まれてから死ぬまで一気に映像で見せられて吐きそうになったわ。いや、あれはキツかった」
その時を思い出してか眉尻を下げ困った顔をするラミンにぷっと思わず吹き出してしまった。
それを見逃さなかったラミンは不敵な笑いを見せてミレイアは落ち着かなくなって目を泳がす。
「1200年前の失敗を繰り返さないためにもお前に頑張ってもらわないとな。この剣で黒い雲は龍と共に永遠に封印するんだ。俺を刺しても俺は絶対に死なない。約束する」
「ラミン…でも怖いわ…もし、万が一…」
優しい眼差しを向けたラミンは目に涙をいっぱい溜めて見つめてくるミレイアの手を取って両手に包みこんだ。
大きな手が冷えた手を温める。
「俺を信じろ。そしてお前自身を信じるんだ」
「でも…」
溢れた涙が手の上に落ち、ぶるぶると震える唇が剣を持つことを拒否している。
「ほら、周りを見てみろよ…」
気が付けば辺りは夜明けのように明るくなり始めていた。
赤い稲光はもう収まり全長が数十メートルもありそうな黒く長い物体が周りを飛び回っていた。
「あの黒い蛇みたいのが龍だ。アドラードの力、俺の化身とも言える」
「ほんとうに・・・」
一瞬龍の顔が横切り、ブルーグリーンの瞳と目が合った気がした。
ミレイアはラミンの瞳をまじまじと見つめる。
宝石のように輝くブルーグリーンの瞳。
この目に見つめられるのが嬉しくて恥ずかしくて好きだった…。
信じてみようと思う、ラミンを、自分を。
世界を救うためならどんな試練も甘んじて受けようと誓ったのだから。
そっと手を外し剣に触れびくっとしながらも持ってみると意外に重く、刀身は30cm程と短い。
恐る恐る持ち上げるミレイアをラミンは何も言わず見守った。
両手で持ち構えると剣から黒い霧が吹き出し一瞬で憑りつかんと負の感情がミレイアを包んだ。
「うっ!」
カランと音を立て落ちた剣。
ラミンは咄嗟に膝立になりミレイアに手を伸ばす。
「大丈夫か?」
「こんな…こんな気持ちではこの剣は使えないわ…」
一瞬で負の感情に取り込まれそうになった。
こんな剣をラミンに刺せない。
刺せるわけがない。
きっとアストラもこの負の感情に支配され思うようにいかずに失敗してしまったのだろう。
黙って暫く剣を見つめていたミレイアは剣の刃先に指先を当てスッと引いた。
「おい、何してる!」
指からにじみ出る血を見てラミンが手首を掴んだ。
「こんな剣でラミンを刺すなんてできないわ。浄化の魔法で少しでも負の感情を抑えたい」
そう言うと床に血で魔方陣を書き始めた。
モリスデンに教わった浄化の魔法。
気休めかもしれないけど何もせずにはいられなかった。
魔方陣を書上げ剣をその陣の中に置き手を組む。
「浄化の魔法を教わった時にモリ―に言われたの。思い出せ、澄み渡る青空を、透き通る風を、沸き出でる泉を、朗らかに笑う子供の声を、人を想う心を…全ては清浄の中にある…」
一心に祈るミレイアから目が離せないでいると魔方陣が光り剣が宙に浮いた気がした。
眩しく目を細めると光りは収まりその中にあった剣は黒から白銀の色に変わっていた。