魔法の鍵と隻眼の姫
「そうかそうか、行ってくれるか?」

先程と違って上機嫌のモリスデンに顔が引き吊るラミン。
肩を抱きバシバシ叩いてきて地味に痛い。

「ミレイア大丈夫か?あんな男と一緒に旅だなんて!ああ、僕は心配だ!」

「トニアス兄さま、大丈夫です。ラミン様は私を守ると約束してくれました。」

おいおいさっきと全然違うじゃないか?
猫を被ってるな。
静かに微笑むミレイアに苦笑いしか出ないラミン。

「ラミン、君を疑うわけじゃないが…ミレイアはこの城を出たことがないんだ。民衆の目もある。心配でならない。」

心配そうに眉を潜めるセイラスにフンと鼻を鳴らし口元を上げる。

「お前たち、あの王女に過保護過ぎやしないか?王女はああ見えて酒場の女より肝が座ってるぞ?」

「何を言っている?誰のことだ。ミレイアは虫も殺せないほど優しく美しく可憐でか弱い女の子だ。そこら辺の腹黒い女と一緒にするな」

真面目な顔で言うセイラスに唖然とする。
どんだけ猫被ればそんな風に思われるんだ?
ちらりとミレイアを見ると薄目でこちらを睨んでいた。

(お兄様に言ったら承知しないから!)

目で訴えてくるミレイアに肩を竦めるラミン。
実際完璧にミレイアはか弱い女の子を演じて家族の庇護欲を書き立てている。

これも生きる術か…。
だが本当の自分を押し殺して息が詰まるのじゃ無いだろうか?
ラミンは幼い頃から自分をさらけ出し我を通してきた。
窮屈そうな生き方をしているミレイアに少なからず同情する。

王と王妃に抱き締められてるミレイアを見やる。
ラミンはそんな同情は要らなかったと後で後悔することとなる。
< 17 / 218 >

この作品をシェア

pagetop