魔法の鍵と隻眼の姫
トニアスに一つ鍵を渡し1時間後に外に食事に行くと言い残し、かつて泊まった部屋に入ったラミンはあの時のまま変わらない部屋に一瞬胸が詰まり、ふらふらと歩きベッドに仰向けにドサッと寝転んだ。

「何だよこれ…まるで傷心の旅だな…」

この部屋で襲う襲わないと言い合い、祭りの装飾や食事に目をキラキラさせ、酔っぱらいの喧嘩に仲裁に入って、熱を出して……。

走馬灯のように思い出してぐるぐると駆け巡る。
あの時はただの小娘だと思っていたのに今胸を占めるのはミレイアの事ばかり。

そんなラミンの背中からモゾモゾと出てきたのはノニでプンプンと潰されそうになったのを怒っていた。

「わりいわりい、俺のフードに隠れてたんだったな?」

体を横にして頬杖をついたラミンはノニの頭を人差し指でグリグリと撫でた。
いつもミレイアの髪の毛の中にいたノニ。
綺麗で豊かな黒髪の中は居心地が良かったらしい。
またミレイアの姿を思い浮かべ苦笑いを溢した。

心の整理をつけるはずがこれじゃ想いを膨らませるばかりで忘れることなど出来ない。

「先が思いやられるな…」

旅は始まったばかりだというのに女々しいと自分でも思う。
今は想いを何処へやるかは後で考えることにする。

本当は想いを断ち切り国を捨て放浪するつもりだった。
それを国王やらモリスデンやらみんなに阻止され必ず帰って来いと念押しされた挙げ句にトニアスの監視付き。

だけど引き留めてくれるのは有難いとも思う。

苦笑いを溢して起き上がり首を傾げているノニを掴んでフードに放り込むと食事をしに部屋を出た。
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