魔法の鍵と隻眼の姫
一夜明けターコイズ村を出て生い茂る森を進む。
昨日の親子の事を思い出すと自然と笑みが零れたトニアスはラミンに気味悪がられる。

「何だよ、思い出し笑いか?このムッツリが」

「何の事だ?昨日の赤ちゃん可愛かったな~ミレイアだなんてあのおじさんは名づけのセンスがある」

ムフフッと笑うトニアスに呆れたラミンは何も言わず肩を竦める。

今も眠っているだろうミレイアを想うと胸が締め付けられるがミレイアが人々に受け入れられていることを直接聞くことが出来てトニアスは嬉しかった。
ラミンもそのことには同意見で行く先々でミレイアの名誉が回復してるのを願った。


「ここからは魔物が多く生息する地域だ。」

「えっ!魔物!?」

大した事でも無いように言うラミンに驚き青ざめるトニアスは今まで魔物に遭遇した事がない。
恐ろしく、人間を襲う魔物は話を聞いただけでも身震いする。

「まさか…魔物と戦わせるつもりじゃ……」

「日頃の鍛錬の成果を試す時だ、心してかかれよ?」

ニヤリと笑うラミンに「冗談はやめてくれ」と言ったが「見聞を広める為には魔物とも戦ってみないとな」と痛い所を突いてくる。
見聞を広める為にラミンの旅に無理やり付いてきたのだ。
世界を知るには脅威も知っておかなくてはいけない。
ごくりと生唾を飲み一抹の不安を押さえ込みうんと頷いた。

そして鍛練の成果を出すときは直ぐに訪れる。

夕暮れ時、そろそろ野宿場所を決めなければと辺りを見回していたときだった。

「ラミン……あれ…」

岩の影からこちらを伺っている赤い目と目が合ってしまったトニアスは息を詰め固まっている。

「ん?ああ、出たな」

ラミンはウォルナーから降り頓着なく近付いていく。

「なっ、ちょっ!ラミン!なにしてるんだよ!」

「どんなヤツか見極めないとな、さすがに初めての相手が大物じゃお前もビビるだろ?」

「何だよそれ…」

既にビビっているのだが、言われてムッとしたトニアスもジュリアールから降りラミンの後を追う。

近付いてくる人間に警戒して威嚇をしながら姿を現した魔物は黒豹のような体に大きな耳、縞模様の尻尾が2本ゆらゆらと揺れていた。
体長2mほどで魔物にしてはそれほど大きくない。

辺りも注意深く観察しこの魔物だけだと知るとラミンはスッと警戒を解いて、顔だけ向いて後ろにいるトニアスをクイクイと人差し指で呼んだ。

「あいつは中級程度の魔物だ。運がいいな?トニアス。力試しにはもってこいの相手だ」

「ええっ、まさかあいつを倒せと?」

「そりゃそうだろ、ほら、早く倒さないと他の魔物も出てくるぞ!」

まだ心の準備が!と後退りしようとすると、行ってこい!っと背中をバシッと叩かれ前につんのめったトニアスは態勢を低くして今にも飛びかからんとする魔物の前に出て足がすくむ。

「ほら、やらなきゃ殺られるぞ!」

「い、いやいやいきなり無理だって!」

「最初っから諦めんな~、ほらもうすぐ襲ってくるぞ~」

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