魔法の鍵と隻眼の姫
呑気に腕を組み薄ら笑いを浮かべるラミンに一瞬の殺意を感じたトニアスはその鬱憤を晴らすべく剣に手を掛けゆっくりと抜いた。

剣を構え魔物を見据える。
やらなきゃ殺られる…そりゃそうだ。
魔物は一歩、一歩と前に出て襲いかかるタイミングを虎視眈々と狙っている。
トニアスがごくりと生唾を飲み一歩足を動かしたとき、ジャリっと音がしたのが合図のように魔物が飛び込んできた。

「そら来たっ!ほら右!左!魔物の爪に負けてんぞっ!踏み込みが甘い!」

襲いかかって来たのを剣で交わして切りつけようとしたのもひらりと交わされて一旦距離を置いた魔物。
はあはあ、と息を切らし一気に吹き出す汗がこめかみを伝い顎から滴り落ちる。

「どうした!腰が引けてんぞっ!」

さっきから嬉々としてヤジを飛ばすラミンは至極楽しそうで、くそっ!ラミンが戦え!っと心の中で悪態をつき、今度はトニアスから向かっていった。

やあっ!とうっ!

無我夢中で立ち向かうも一太刀も浴びせられない。
やっぱり自分じゃ太刀打ち出来ないのかと諦めかけたとき、

「闇雲に振るってもダメだ!相手をよく見ろ!動きを先読みするんだ!」

ラミンの声にはっとなった。

ガルルと唸りをあげ睨んでくる魔物。
その目を離さずにじっと観察した。
ゆっくりと前足を前に出し、尻尾が縦に揺れ、くっと態勢が前に出て飛び上がらんとする所を見逃さなかった。
真上に飛んできた所を横に避けると同時に剣を振り上げると初めて手応えがあった。
ギャウウっと転がっていく魔物に思わず放心。

「や、やった……」

「こらっ!油断すんな!来るぞ!」

起き上がった魔物はトニアスに突進。
一瞬油断したものの何とか避けたトニアスは冷静になれと言い聞かせて剣で応戦。
先ほどとは違い着実に魔物を追い詰めていった。

「やれ!そこだって!ああっだから踏み込みが甘い!」

拳を上げ煩いラミンに文句を言いたい所だがそんな余裕は無いトニアスは最後の力を振り絞り魔物の首に剣を突き刺した。

声もなくドサッと倒れこんだ魔物はピクリとも動かない。

「今度、こそ、やった、のか…?」

ゼエゼエと荒い息を吐きながら魔物を見るとボッと青白い炎が上がった。
ワッと驚き仰け反るトニアスの肩にラミンがバシッと手を置いた。

「やったな!やりゃ出来んじゃん」

横を向けばにやりと笑うラミン。
ホッとしてやっと力んでいた体の力を抜いた。

やった、やってやったぞ!
燃える魔物を見て初めて魔物を倒した達成感がじわじわと込み上げてくる。
嬉しさを隠しきれずにラミンを見ると、鋭い視線を後ろに向けていて一瞬ぞっと鳥肌が立った。

ギョッとした瞬間に肩に置かれていた手がトニアスを押しその拍子にトニアスは後ろに倒れ込んだ。

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