魔法の鍵と隻眼の姫
木の影から辺りを伺うと、周りの大木より大きな物体が姿を表しこちらに背中を向けている。
そのごつごつとした背中の真ん中を沢山の角のようなものが生えていていかにも固そうだ。

ぎゃうっ!!

悲鳴と共にバリバリと異様な音がしてラミンは固唾を飲んだ。

「ラミン!やっと追い付いた…」

はあはあと息を切らしトニアスがたどり着くとその大きな物体がこちらを振り向いた。

「なっ、あれは…?」

「バカでかい魔物……が、魔物を喰ってる?」

振り向いた巨体は頭の上までびっしりと角が生えギョロりとした目に面長の顔で前足は短いが鋭い爪が見えている。
そして、その口にくわえられているのは牛のような頭に熊の体をした魔物でバリバリと音がしたのは食べられている音だった。

ラミンのフードからノニが青い顔をして飛び出して来て危険を察知して二人の周りに金粉を振り撒き結界を張る。

「うわっ!魔物が食べられてるなんて…」

「ああ、さすがに俺もこんなの見たことがない」

血みどろの口元には鋭い牙がズラリと並んでいるのが見えた。
目を背けたくなるような凄まじい光景に青くなるトニアス。
結界の中とはいえラミンも眉根を寄せ警戒を怠らない。

「こいつだな、町を襲ってるのは」

「ラミン、まさか退治する気じゃないだろうな?あんなの二人じゃ無理だよ!」

「無理でも…こいつを殺らなきゃまた町が襲われる。やっと黒い雲の脅威から解放されたんだ。町の人間がまた苦しむのを見過ごせない」

引き吊る口元を無理やり上げ笑って見せたラミンの目は本気だった。
止めた方がいい!とトニアスが説き伏せても、ノニが襟元を引っ張り泣きそうな顔で首を横に振ってもラミンの意思は固かった。

「トニアス、町に繋いであるウォルナーを連れてこい。森の中じゃ木が邪魔で分が悪い。メリダヌスの砂漠地帯まで誘導してそこであいつを討つ」

「無謀だよ!せめてメリダヌスの兵に応援を要請しよう!」

「そうだな、だが兵を待ってる暇はねえ」

二人が話している間にドスンドスンと魔物は歩き出し町へと向かっている。
このままだとまた町が襲われる。
再度ラミンはトニアスに頼み込む。

「俺があいつを砂漠地帯まで誘導するから森を抜けた所にウォルナーを連れてきてくれ」

「でもラミン!」

無理だと渋るトニアスの肩を掴んで真剣な顔で訴える。

「頼むトニアス。小娘が願った町の平和をあんな魔物に壊させる訳にはいかないんだ。俺が必ずやっつけてやるから!」

「小娘って…ミレイアが?」


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