魔法の鍵と隻眼の姫
そうしてるうちに魔物はあまりの人の多さからか、散々ラミンに痛め付けられたからか、突然その場から後退り逃げ出した。

「ヤベッ逃げたっ、追うぞ!」

咄嗟に走り出すラミン。
その脚の速さに男達は驚き、暫し呆然。

はっと気を取り直した上官が行くぞ!と声を張り上げ怒号と共に走り出した。

その頃トニアスは馬達に走り寄りラミンを追うべくジュリアールに飛び乗った。

「ウォルナー!着いてこい!ラミンを追うぞ!」

その掛け声がわかったようにウォルナーは前足を高く上げ我先にと走り出した。

どこへ行くのか?闇雲に走る魔物を追ってラミンもひたすら走るがもう真夜中で足元は覚束ない。
そこへ並走するようにウォルナーが追い付いた。

「ウォルナー!よく来たっ!」

ラミンはウォルナーに飛び乗り手綱を掴む。
それでもなかなか追いつけないでいると気付けば砂漠を抜け谷間の間を魔物は駆けていた。

その上にいつの間にか雲が立ち込めていてゴロゴロと唸り声を上げていた。
ピカッと光ったと思えばドドーンっと大きな稲光が魔物の前に落ち行く手を塞いだ。
グワーッと雄叫びを上げ魔物は方向転換して丘の上を登りだす。

ラミンもその後に続いて追っていくと、魔物の行く手は高い崖になってるようでその先に進めず立ち止り背中を向けている。
バシバシと尻尾を地面にたたき付けイライラしているのが分かる。

その間に兵たちも追いつき松明が魔物を囲んだ。
振り返り、グワッと雄叫びを上げた魔物。
ウォルナーから降りたラミンはゆっくりと剣を構え直した。

「ここがお前の最後の地だ。覚悟しろ」

唸るようにそう言うとラミンは高く飛躍し魔物に切りかかった。
爪で応戦するも魔物は息も絶え絶えのようでグワッと闇雲に振り回す。
尻尾を振り回しじわじわと近づいてきていた兵たちを蹴散らした。

「お前らっ!気を付けろ!」

「どれだけ周りに気を回してるんだよ、自分が気を付けろよ…」

もう力も尽きてフラフラだろうに後ろの兵たちを気にして声を掛けるラミンにウォルナーを捕まえ避難したトニアスが呆れる。

「これで、最後だっ!」

ラミンは最後の力を振り絞り地を蹴り体ごと魔物に突っ込んだ。
魔物はその勢いで後ろへと倒れて行き足を踏み外して谷底へと落ちていく。

「ラミンっ!」

一緒に落ちた!!

!!!
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