魔法の鍵と隻眼の姫
と思ったが・・・

ふわりと光が浮かび上がりゆっくりとそれは自分たちの元へと降りてきた。
それは光に包まれたラミンでトニアスはホッとする。

「無理をしおってからに。馬鹿もんが」

何処からともなく聞こえてきた声に皆がきょろきょろと目を彷徨わす。
スッと何もないところから出てきた黒いローブにトニアスが叫んだ。

「モリー!」

トニアスが駆け寄り、皆は突然現れたローブの老人にどよめく。

「トニアスか。ご苦労だったな。この向う見ずは世話が焼けたじゃろう」

「いや、それはもう…」

トニアスが苦笑いで言葉を濁す。

何故かモリスデンはラミンに厳しい。
ラミンもいっつも「ジジイ」と反発するからお互いさまなんだが…。

「ようやったな、あの魔物はわしでも手こずる大物じゃった」

「え?そうなの?」

モリスデンでも手こずるだなんてどれだけなんだと驚愕する。
それをほぼ一人でやっつけてしまったラミンに空恐ろしいものを感じた。

周りが明るくなったと思ったら崖の下では魔物が燃えて青白い炎が辺りを照らす。

倒れているラミンはまだ目を覚まさない。
見れば全身砂まみれであちこちに傷があり痛々しい。

「モリ―、ラミンは…」

「ただ眠ってるだけ、大丈夫じゃ」

そう言うとモリスデンはラミンの横に立ちカツンと杖を突いた。
すると温かな光がラミンを包み、見れば傷がどんどん癒えていく。
砂まみれだった体も払われぼろぼろの服も綺麗になっていった。
ほぼ初めて魔法を見た兵たちがそれを見てより一層どよめいた。

上官らしき男が兜を脱ぎモリスデンの前に跪く。

「あなたは大賢者モリスデン様では?」

「ああそうじゃ、大賢者はわしだが?」

ふふんと鼻を鳴らし胸を張るモリスデンに上官の顔がパッと明るくなる。

「ありがとうございます。あの魔物から我々を救ってくれたその方のこともそうですが、あの泉を元通りに治し水を湧かせてくれた件についてもお礼を申し上げます」

破壊されたあの泉。
本当は水も枯れもう戻ることはなかったがモリスデンが力を貸し再び水を湧き帰らせた。

「ふん、あの泉は神の泉だ。あれを破壊するとはお前らも罰当たりよ。しかし、黒い雲の影響もあってわしの力が及ばずにお前らを戦いへと誘ってしまったのもわしの未熟さゆえ。今回ばかりは力を貸してやったのだ。後はお前らが復興を成し遂げよ」

「もちろんです。ところで、あの方はいったい何者なのですか?」

兵たちはもちろんこの世の者たちほとんどがラミンの事を知らない。
彼が世界を救った救世主ということも…。

「あ奴は…ただの馬鹿もんじゃ」

ふんと横を向くモリスデンに呆気にとられる上官。
ぷぷっとトニアスが噴き出した。
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