魔法の鍵と隻眼の姫

最愛

リノン王女輿入れの日

3日かけて何台もの馬車を連ねてリノン王女はセイラスの元に嫁ぐ。
結婚式は2日後だ。

車窓から顔を覗かせると、そこかしこから国民が手を振ってくれるのを嬉しく思いながら手を振り返すリノン。

黒い雲の驚異が去り復興を推し進めている今、ノアローズの国民もリノンの故郷クルミル王国の国民もリノンとセイラスの結婚を待ち望んでいた。

「リノン王女さまー!ようこそノアローズへ!」

「平和を取り戻した今、セイラス王子が結婚とは喜ばしい限りだ!」

嬉しい声が聞こえリノンは笑顔で手を振りながらも近付く城にそわそわと落ち着かなくなってきた。

今日から私はこのノアローズで生活するのだわ。これから毎日セイラスにも、ミレイアさまにも会えるのよ!

時折ノアローズに赴きセイラスと親交を深めて来た。
セイラスのことはもちろん愛している。
でもミレイアと会えることが楽しみで仕方がない。

待ち望んでいた眠るミレイアとの初対面の時、ずっと妹が欲しかったリノンは可愛らしいミレイアを見て人目で気に入った。
異色の目を持つものと皆に恐れられる存在だと知っていてもそんな事は気にならなかった。
実際会えばやはりミレイアの姿からそんな風には見えずにただただ目覚めたミレイアと義理姉妹として話がしたかった。

「いつか目覚めてくれたら…こんな嬉しい事はないわ…」

期待と少々の不安を抱え、馬車はノアローズ城の門をくぐった。
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