魔法の鍵と隻眼の姫
燃え上がる熱にはっはっと息を吐き滴る汗がミレイアの肩に落ちる。
暫くするとさっきの熱さが嘘のようにスーッと無くなり体の怠さも無くなった。
はぁーっと長く息を吐き、抱き締めていた腕を緩めた。

「すまん、大丈夫か?」

ミレイアの肩を掴んで引き離すとぎゅっと目を瞑っているのに驚いた。

「おい!小娘?」

小刻みに肩を揺すられハッと目を開けたミレイアは呆然とした顔でラミンを見た。

「あ、あれ?……ラミン!大丈夫!?」

必死にすがるようにラミンの顔を覗くミレイアにラミンは安心するように笑みを浮かべた。

「大丈夫だ、さっきのが嘘のように熱さも無いし体も何ともない」

「あ、良かった……あれ?私も何ともない…」

あれだけの熱を吸い取った筈なのに熱が集中していた右目も体も何ともない。

「ん?私もって何だ?」

「あ、うん。何でもない」

慌てて首を振るミレイアに疑わしい目を向ける。

「お前まさか、あの力使ったのか?」

「え、えっとぉ、……ちょっとだけ?」

薄目で睨まれ嘘がつけないミレイアが白状するとラミンは盛大にため息をついた。

「はぁー、力は使うなと言っただろうが」

「だ、だって!あんなに熱くて辛そうな顔見たら…!」

また目が潤み今にも零れそうな涙を見てラミンは焦りミレイアの頭に手を置いた。

「お前にすがったのは俺の方だよな、悪い。触れたら力を使えるのを忘れていた。本当に体は大丈夫か?」

俯いたまま頷いたミレイアに苦笑いしながらポンポンと頭を撫で手を離した。

苦しみ悶える中なぜだかミレイアに触れたかった。
抱き締めているだけで安心して熱さも苦しさも消えて行くような感覚。
ミレイアの力のお陰かもしれないがそれだけじゃなくて……。
掌を見つめ考えていたが何も答えが出ずにその掌を握った。
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