魔法の鍵と隻眼の姫
冷たい目が優しく和らぎフードの娘に目をやるラミン。
その横顔を見たアマンダは眉根を寄せ唇を噛んだ。

「おっ…?」

腕を引っ張られアマンダの方を向いたラミンは唇にねっとりと温かい感触が触れる。

「「「「な~~~~~っ!!!」」」」

男たちの絶叫。
顔を上げたミレイアが見たのはラミンの首に腕を巻き付けキスをするアマンダ。
濃厚なキスをお見舞いされたラミンは固まっている。

きりっと胸が痛い。
ミレイアは自分のローブをぎゅっと握り目を背けた。

「おいっ」

我に返ったラミンがアマンダを引き剥がした。
ふふんと笑ったアマンダが振り向き男たちに言った。

「私の彼に何か文句でも?」

ショックを受けた男たちは項垂れ、すごすごと引きさがる。
唇に付いた口紅を手の甲で拭うラミンを睨む奴もいたがもう文句を言う事もない。

やっと収拾がついたらしい。
突然キスされて驚いたがまあいいかと楽観のラミン。
アマンダは何事もなかったようにラミンの腕を取り真ん中のテーブル席に座った。

「おい、小娘お前も来い」

隣の座席を引いてミレイアを呼ぶラミンの声にハッとしてラミンの元へ駆け寄った。
アマンダが薄目で睨んでくる。
ミレイアが座るのを見届けたラミンがここは何がうまいんだ?と振り返りアマンダを見るとその顔は豹変しうっとりとラミンを見つめる。

苦しむことはないがやっぱり気分が悪い。
フードの裾を引っ張り俯いた。

アマンダとラミンは昔話に花が咲いて楽しそうに食事をしていたがミレイアは食が進まずちびちびとつまむ程度。
美味しいと評判の料理もミレイアにとってはどれも味気ない。
フードも被ったままでその異様な光景に回りの客たちはチラチラと盗み見ていた。

「よう、アマンダ。さっきは騒いで悪かったな?明日出立するんだろ?最後にもう一度あんたの踊り見せてくれよ?色男さんも悪かったな」

食事も終盤に差し掛かった頃、客の一人がワインの瓶を持ちながらアマンダの前に来るとアマンダとラミンに注ぎながら頼む。

「そうね、みんなには良くしてもらったし。今日のは目に余るけど。お別れの挨拶の代わりに踊ってあげるわ。ラミン、あなたとの再会を祝した踊りよ、よく見ていてよね?」

ラミンの顎を指先でさらっと撫でウィンクすると一段上がった舞台に立ったアマンダ。

「アマンダの踊りは神掛かっていて世界一といわれている。金も取らずに踊りを見れるのはそうないからよく見とけよ?」

自分の事のように得意そうに言うラミンにミレイアはますます面白くない。
ブスッとミニトマトをフォークで刺した。

< 59 / 218 >

この作品をシェア

pagetop