魔法の鍵と隻眼の姫
翌朝、重苦しさで目を開けたラミンは抱きつくアマンダに一瞬ギョッとして頭を上げた。

ああ、昨日はアマンダと………。

ドサッと頭を落とし額を手で覆い深いため息を吐く。
何時寝たかもわからないが浅い眠りを繰り返してたように思う。
もう一つため息を吐きアマンダを起こさないように何とかすり抜けベッドに腰掛けた。
まだ窓の外は暗く夜は明けていない。
ラミンはシャワーを浴びようとバスルームへと入ると、姿見が自分を写し黒いアザがはっきりと自分の胸を横断している。
二の腕にまで伸びたそのアザを忌々しげに握り爪が食い込んだ。

シャワーを頭からかぶるとピリッと腕に痛みが走り血が出るほど掴んでいた事に気が付いた。
くっきりと爪痕がつき血がシャワーと共に流れていく。

この血に何の意味があると言うんだ…。

眉を寄せ流れてく血を見つめているとふと、ミレイアは大丈夫だろうかと思い出した。

急いでバスルームを出て支度をすると寝ているアマンダを横目に部屋を出て、足早にミレイアの部屋へ向かうとドアをノックした。

・・・

シーンと静まり返った部屋。
さすがにまだ寝てるか…。
一瞬迷ったがそっとドアノブを回してみると何の抵抗も無く開いてしまった。

「はっ?なんて不用心な…。ノニはどうした?」

言いながら中へ入るとベッドはもぬけの殻。
またいつかのようにドアというドアを開けるが何処にもいない。

「何処に行ったんだ?」

焦りだしたラミンはまだ乾ききっていない髪をくしゃくしゃとかき回した。

「…でも待てよ?俺は雷に撃たれてない。というとはまだ近くにいる…」

冷静になれと言い聞かせるようにもう一度ガシガシと頭をかくとヒヒーンと外から馬の嘶きが聞こえる。
ウォルナーとフィーダは宿隣の厩にいる。
もしかするとそこに…。
部屋を飛び出し廊下を駆けだした。

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