魔法の鍵と隻眼の姫
「ノニ、今日の私変かも知れない…」

一人部屋に入りベッドに腰掛けるとポツリと呟いたミレイアに反応してノニが飛び出してきた。
くるくると飛び回った後膝の上に置かれたミレイアの掌に乗り心配そうな顔をする。

「あの二人を見てるとこう…胸がモヤモヤしてチクチク痛くて、苦しくて…私何かの病気かしら?」

初めて体験するこの感情を体の異変だと思ったミレイアはノニに話かけるがノニは首を傾げ困り顔。

右目が熱く感じる。
そっと眼帯に手を当てるが手に熱さは伝わらない。
ふぅと小さくため息を着いてノニを手に乗せたまま立ち上がったミレイアは窓辺に行き窓を開けた。
空は徐々に黒い雲に覆われつつある。
ノニが飛び立ち辺りを飛び回る。
雲間から三日月が見え、ミレイアは手を組んだ。

「お父様、お母様、セイラスお兄様、トニアスお兄様、モリー、みんな、お元気ですか?国は相変わらずでしょうか?私は…不謹慎にもこの旅を楽しんでいました。ラミンとの二人旅が楽しくて…。だからバチが当たったみたいです。今は苦しくて……明日からあの二人と共に行くのが不安で仕方ありません……お父様達に会いたい。いつものように抱き締めてほしい」

弱音を吐いたミレイアは一筋涙を流し目を閉じた。
目に浮かぶのはいつも優しかった家族の笑顔。
そして、ラミンの顔。
パッと目を見開きなぜラミンが出てきたのか不思議でならない。

あんな…横暴で乱暴で口の悪い人のこと思い浮かべるだなんて……。

眉根を寄せその顔を消そうとぎゅっと目を閉じるがより鮮明にラミンの優しい眼差しが写し出される。
しかし自分に向けられていたはずのその眼差しがアマンダを見つめた。
きっと二人は今頃…。

「ノニ、窓を閉めるわよ。もう休みましょう」

目を開き何も考えないように空に目を向け言うと、周りを飛び回っていたノニが部屋に入り、窓に手をかけ閉める前にもう一度雲間から見える三日月を見た。
明日から向かう場所は雲も厚くなり月どころか空も見えないだろう。

「少しでも早く使命を果たします。お父様達が明日も無事に過ごせますように…」

月に向かって祈り窓を閉めた。
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