魔法の鍵と隻眼の姫

3人旅

うふふ…
うふふふふ…

憂鬱になりそうな曇天の空。
草木は枯れ、木々も細々としていて荒れた大地。
人もいない高原に似つかわしくない笑い声が聞こえる。

振り向いたミレイアは前を向き直りため息を吐き、フィーダの鬣を撫でながらなぜまだこんなところに居るのかとまたため息を吐く。

後ろには、ウォルナーに二人乗りしているラミンとアマンダ。
ラミンの前に横乗りをしているアマンダはラミンに抱き着き頬や唇にキスをしては嬉しそうに笑いしきりに話しかける。
ラミンも満更でもないようにアマンダのキスを受け入れてるのが腹立たしい。

のろのろと馬足も遅く、昼過ぎだと言うのに出てきた町はまだ遠くに見える。
朝からの出来事を思い返してまたため息を吐いたミレイア。

あれからラミンが部屋に戻りアマンダを起こし出立の支度をしていたのだが、アマンダの支度が遅く降りてくるまでに2時間かかった。
シャワーを浴び、化粧をし、どの服を着るのか悩み、悠然と朝食を食べ、大量の荷物を片づける。
当然夜は明け通りは人々で活気にあふれミレイアは厩で仕事をする人たちの邪魔にならないようにホテルのラウンジで待っていた。
やっと降りてきたと思ったらトランク二つ持ったラミンとひとつを持ったアマンダ。

「え~?馬車で行かないの?この荷物どうするのよ!?」

憤慨するアマンダに「馬車が通れない道も行くから無理だ、必要なものだけ持って後は置いて行け」とラミンが諭すが「どれも必要なの!置いてなんて行けないわ!」と一歩も譲らず、諦めたラミンが仕方がないと、この荷物を馬に括り付けて行くと言いだした。
呆れるミレイアはため息を付きノニを呼んだ。

「馬に括り付けるなんて馬たちが可愛そうだわ。ノニ、お願い」

ノニがミレイアの髪の毛から出てくると3つのトランクに金粉をまき散らす。
すると溶けて行くようにトランクが消えた。

「えっ?何これ?トランクが消えたわ!この飛んでるの何?!虫?」

飛んでるノニを掴もうとぶんぶんと腕を振り回すアマンダを避け、虫呼ばわりされてムッとしたノニがアマンダの顔の前であっかんベーと舌を出しミレイアの肩に乗った。

「ノニに触らないで。トランクはノニが預かってくれるわ。もう時間も遅い直ぐに出立しましょう」

アマンダを睨みフィーダの手綱に手を掛ける。

「や~だこわ~い。あの虫便利ね?これって魔法?」

「ノニは妖精だ。助かったノニあんがとな?」

アマンダがわざとらしくラミンに擦り寄り上目使いで聞く。
ラミンがノニに話しかけるとノニは振り向いたがふんと顔を逸らした。
どうも虫と呼ぶアマンダと一緒に居るラミンが気に喰わないらしい。
肩をすぼめるラミンはアマンダをウォルナーに乗せた。

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