魔法の鍵と隻眼の姫
ひっと悲鳴を上げそうになったミレイアは口元を押さえ何とか堪えた。
ゆっくりとミレイアの前に出て魔物を見据えたラミンはノニを呼んだ。

「ノニいるか?ここに結界を張ってくれ」

「ダメよ、もう見つかってる。気配を消しても出てくるまで居座られるわ」

動くものには結界は張れない。
結界を張ってしまうとそこから動けないのが難点だ。

「それでも張れ。俺があいつを倒せば問題ない」

「でも!」

ラミンの背中にしがみつき止めようとする。
またあんな大怪我したら…!
その間にもミレイアの髪の中から飛び出してきたノニが辺りに金粉を撒く。
気配の消えたことに驚き魔物が鼻を高くしてひくひくと辺りの匂いを探っていた。

「ちょっと!何してんのよ!」

まだ魔物に気付いてないアマンダはラミンにしがみつくミレイアに怒って立ち上がり向かってくる。

腕を掴むミレイアの手をやんわり掴んだラミンは顔だけ振り向きにっと笑った。

「心配すんな、この前みたいなヘマはしねえ。お前らは結界の中で大人しくしてろっ」

「ラミン!」

言い終わるか終わらないかで結界を飛び出していったラミン。
魔物も気付いたようで勢いよく迫ってくる。
追いかけようとした所へアマンダに捕まった。

「ちょっと!あたしのラミンに触んなっ…きゃあ~化け物!!」

やっと魔物に気付いたアマンダが叫び声を上げ逃げようと翻すが石に躓き派手に転んだ。

「落ち着いて下さい!ここにいれば大丈夫だから!」

「いっいやっ!殺される!」

パニックのアマンダに駆け寄り抱き起こすが手を払われた。
暴れ結界から出て行こうとするアマンダを何とか取り押さえると自分に向き直らせ頬を引っ叩いた。

「しっかりしなさい!ラミンが魔物と戦ってるのに自分は逃げるの!?」

ラミンは魔物と戦っているのに逃げるなんて許さないとでも言うように真正面からアマンダを睨んだ。
頬の痛みに正気を取り戻したアマンダがラミンを探す。

「ら、ラミンは…?」

「私たちを守るために魔物と戦ってるわ。彼の事を…好きなら逃げずに見守りなさい」

「…」

「ここはノニの結界の中だから魔物には見えない。安全だから大人しくここに居て」

戦うラミンを呆然と見ているアマンダに大人しくなったとホッとしてミレイアもラミンを見守った。



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