白雨の騎士
嫉妬

外の気温が少しずつ下がり、冷たい空気が流れ始めた。

今日の王宮はバタバタとしていた。
年に一回、各州の当主が集まって会議行う日だからだ。
国王は早急な議案がない限りこの会議には出席しないが、代わりにオーギストが会議の内容をまとめて本日中に国王に報告をする決まりだ。

議題は様々で各州の作物の出来や治安の報告、州の当主が変更される場合やその他王家の世継ぎの話し合いもされる。


今年は雨が多く、作物が災害によってどこの州でも出来が悪く、災害に強い品種改良の議案が多く出された。

また先日起こったハデス家の闇の力の件も話に上がった。今回ハデス州の当主アテクシは欠席し代理が参加していた。


一通りの話し合いが終わったところで、一人の男性が立ち上がった。

ルーズト州当主のアルベルトだった。

ルーズト家は国でも1、2を争う名門だ。


「…アリス様の結婚についてお伺いしたい。アリス様が次期女王になられる事は決まっております。話に聞くと国王はアリス様の結婚相手にと近衛を入隊させたとか。だが未だ相手は決まっていない。」


アルベルトの言葉にオーギストは額から流れる汗を拭った。

「はぁ、確かに早く決めなければなりませんが、陛下がまだ現役で有らせられますのでアリス様の結婚相手は慎重に考えたいとの事です。」

オーギストの言葉にアルベルトはふっと笑みを漏らした。


「そんな流暢なことを言っていたら、また何年も先延ばしになってしまいますよ。世継ぎのこともあります。急ぐに越した事はありません。」


アルベルトの鋭い眼差しにオーギストはごくりと喉を鳴らした。


「何としても来年には決めてもらいたいところです。」

そう言ってアルベルトは静かに席に座った。


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