白雨の騎士
「…ハンス!ハンス見てくれ!」

家に戻るなり、シドは近衛隊員募集の用紙をハンスに見せた。


「…まぁっ!この間話していたばかりなのに!」

ハンスは用紙を見て驚いた。


「そうだろ!やっと王宮が近衛を募集するんだ!俺は受けるよ、旦那様にお願いしてくる。」


子供の様にはしゃぐシドを見て、ハンスは表情を曇らせた。



「…旦那様!」

シドは勢いよく主人の部屋のドアを開けた。


「…シド、どうしたんだ騒々しい。」

部屋で銃の手入れをしていたこの家の主人、アルは何やら嬉しそうなシドを見て言った。


「旦那様、俺は王宮の近衛隊に入りたい!」


そう言って募集の用紙を差し出した。

アルは受け取ると、内容をじっくりと読んだ。


「…王宮が募集したのか。」


「はい!」


キラキラとした笑顔で答えるシドにアルは小さく溜息をついた。


「…お前を引き取ったとき、私は自分に息子が出来たようで嬉しかった。お前は私の息子も同然だ。」


アルの言葉にシドの表情から笑顔が消えた。

ゴクリと喉を鳴らし、汗で湿った手を握りしめた。


「…息子が生きたい道を応援するのは、父親の役目だ。シド、必ず立派な騎士となり王宮で王や姫様をお守りするのだぞ」


アルの言葉に、シドは瞳に涙を浮かべた。


そしてアルの前にシドは跪いた。


「旦那様…ここまで育ててくれて本当に心から感謝しています。きっと立派な騎士となってみせます。」


シドの言葉にアルは深く頷いた。
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