偽物の恋をきみにあげる【完】
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「えっ、大雅……大丈夫?」
久しぶりに会った彼に対する、私の第一声はそれだった。
「大丈夫ってなにが?」
「いや、顔色悪くない? てか……なんかやつれてない?」
「そう? まあ忙しかったからなー」
私の心配を他所に、大雅はへらっと笑った。
「忙しいって、仕事?」
仕事? と訊いてはみたものの、私は大雅が何の仕事をしているのか、実は全く知らない。
いつも私服だから、きっと私服でできるような仕事か、もしくは制服がある仕事なのだろう。
「んーまあ、そんなとこ」
大雅は時々、私の問いに対して、こんな風に言葉を濁す。
だから、私は大雅について知らない。
よく考えたら、仕事どころか住んでいる場所すら知らない。
勝手にずっと地元にいると思っていたが、本当は違うのかもしれないのだ。
最近は妙にギリギリを攻めてくる大雅のせいで、まるで本物の恋人同士のように感じてしまう瞬間がたくさんある。
でも、そんなものは錯覚。
私は大雅のことを、殆ど何も知らない。
私達は結局、偽物の恋人なのだ。
急にとても淋しくなって、思わず大雅の手を取った。
大雅は少しだけ驚いた顔をして、でもそっと握り返してくれた。
大丈夫、本物じゃなくてもいい。
大雅がいれば、それでいい。