偽物の恋をきみにあげる【完】

*****

「えっ、大雅……大丈夫?」

久しぶりに会った彼に対する、私の第一声はそれだった。

「大丈夫ってなにが?」

「いや、顔色悪くない? てか……なんかやつれてない?」

「そう? まあ忙しかったからなー」

私の心配を他所に、大雅はへらっと笑った。

「忙しいって、仕事?」

仕事? と訊いてはみたものの、私は大雅が何の仕事をしているのか、実は全く知らない。

いつも私服だから、きっと私服でできるような仕事か、もしくは制服がある仕事なのだろう。

「んーまあ、そんなとこ」

大雅は時々、私の問いに対して、こんな風に言葉を濁す。

だから、私は大雅について知らない。

よく考えたら、仕事どころか住んでいる場所すら知らない。

勝手にずっと地元にいると思っていたが、本当は違うのかもしれないのだ。

最近は妙にギリギリを攻めてくる大雅のせいで、まるで本物の恋人同士のように感じてしまう瞬間がたくさんある。

でも、そんなものは錯覚。

私は大雅のことを、殆ど何も知らない。

私達は結局、偽物の恋人なのだ。

急にとても淋しくなって、思わず大雅の手を取った。

大雅は少しだけ驚いた顔をして、でもそっと握り返してくれた。

大丈夫、本物じゃなくてもいい。

大雅がいれば、それでいい。
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