偽物の恋をきみにあげる【完】
課長が煙草を1本取り出してくわえる。

ジッポの蓋が開く、カチン、という金属音が小さく鳴った。

…………あれ。

不意に、頭の中にある景色が浮かんだ。

それは、このバーにいる大雅の姿だった。

どうして大雅が…………。


……ああ、そうだ。

再会したあの日、私はこの店に来たのだ。

そう気づいた途端、それはやけに鮮明に蘇った。


「ねえ瑠奈、俺と付き合うー?」

目の前でヘラヘラと笑う大雅。

「あはは、急になにー?」

私も酔っ払って、ふにゃふにゃ笑っている。

「てかー、もしさ」

煙草の煙を吐き出しながら、大雅が言う。

「もし、本気になっちゃダメって言ったら、それでも俺と付き合ってくれる?」

「なにそれー? 遊びで付き合おってこと?」

「ま、そんな感じ? でもちょー大事にするよ」

「えー、遊びぃ?」

「うん。ダメ?」

「うーん」

「あ、半年。半年だけでいいからさ!」

「なんで半年~?」

「まあいいじゃん。ね、ダメ? 半年間だけ、俺と恋人ゴッコしてよ」

「恋人ゴッコかあ。うーんまあ面白そうだし、いっかあ!」


……思い出した。

大雅はあの日「半年だけ恋人ゴッコしよう」と言ったのだ。

半年だけ?

コタローくんだけではなく、大雅も?


……いや、それより。

私達、再会して、今何ヶ月目?
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