偽物の恋をきみにあげる【完】
それは、私達の関係と私のペンネーム「月」をモチーフにした、短い物語だった。

結末もわからない、小さな小さな物語。

なのに、胸を打たれた。

『ぼくはきみを好きで仕方ないんだ』

そう締めくくられた物語は、紛れもない恋文だ。

私宛てのラブレター。

なんてロマンチックなプレゼントなのだろう。

『今夜の月は特別に綺麗だね』

いても立ってもいられなくなった私は、窓を開けてベランダに出た。

どうしても、月が見たくなったから。

外に出た瞬間、真冬のひんやりとした空気が頬を刺す。

身を縮めながら空を見上げたら、満月から少しだけ欠けた月が、澄んだ闇夜で煌々と輝いていた。

『きみはぼくの世界を照らす月』

コタローくんこそ、私を優しく照らす月だ。

コタローくんはいつだって、私の心をそっと優しく包み込んでくれる。

『ぼくは、きみに会いに行くよ』

本当に会いに来てくれたらいいのに。

会いに来てよ。

今夜の月は、切ないほど綺麗だから。

「……会いたいな」

夜空に浮かぶ白い月を見上げながら、思わずそう呟いた、その時──。

「るーなちゃん」

今決して聞こえる筈のない声が、私を呼んだ。
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