偽物の恋をきみにあげる【完】
「不思議って?」

『あのね、あの物語って、一度も会ったことがないネカノネカレって設定だよね?』

「うん、そうみたいだねえ」

まるで他人事のように返事をしたのは、コタローくんとの関係は、サユユにも誰にも話していないからだった。

ムーンリバーでは、交際や出会いを目的とした利用は禁止という決まりがあるので、公にしないでいるのだ。

目的にしたのではなく、結果的に交際に至っただけだが、言わないに越したことはない。

『でも男性の方は、彼女の顔を知ってるんだなあって』

「彼女の顔を知ってる? どういうこと?」

思わぬ言葉に、私は聞き返した。

「会いに行くよって言ってるから? それはなんてゆーか、優しさと思ってるんだけど」

あれは、コタローくんが私についてくれた優しい嘘だと、私は受け取っていたのだ。

『でもそれだけじゃなくてね。他にもそう思った部分があったんだけど……あれ? そう感じたの私だけかなあ』

「他にも?」

『うん。あっ、ごめん。お昼休み終わっちゃう!』

サユユも私と同じようにOLなのだ。

でも、私達の昼休憩は30分程ズレている。

「了解、私もう1回読んでみる~」

サユユとのメールを終えると、私はサイトを開いて、もう一度コタローくんの『恋文』を読み始めた。
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