偽物の恋をきみにあげる【完】
コタローくんは、私を知っている。

きっとそういうことなのだろう。

そしてそれは、逆に言えば、私もコタローくんを知っているということにもなる。

私が知っている人?

誰だろう……。

私の身近にいる人。

会社の人、 男友達……そんなの、たくさんい過ぎてわからない。


昼休みが終わっても、私の頭はコタローくん探しでいっぱいだった。

でも、フロアを見渡しても、それっぽい人物は見当たらない気がした。

一番コタローくんに近い喜多野課長は、でもコタローくんではないのだ、たぶん。

『ペンネーム? 本名をいじりましたね』

喜多野課長をぼんやり見ていたら、不意にコタローくんの言葉を思い出した。

そうだ、だから私はてっきり課長かと思ったのだ。

本名をいじった?

それはつまり、ペンネームをいじれば本名になるということだ。

私はパソコンのメモ帳にコタローくんのペンネームを入力してみることにした。


『 北 瀬 虎 ……


虎、とら?


……………………え。


突然頭に浮かんだある可能性に、私は思わず固まってしまった。

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