偽物の恋をきみにあげる【完】
でも結局、何の確証もないから、私は大雅にもコタローくんにも、このことを訊けずにいた。

それに、何て尋ねればいいのか全くわからない。

いきなり訊いても、もし違ったらなんのことやらだ。

勘違いかもしれないし、確かめる術も思いつかないから、しばらくは様子を見ることにした。

『つーちゃん、こんばんは』

つーちゃん、か。

私が「るーちゃん」と呼ばれていたのを知っている大雅なら、思いつくあだ名だ。

「コタローくん、こんばんは。今日は眠たくない? 大丈夫?」

『わー、気を使わせちゃってすいません、大丈夫です! ありがとうございます^^』

……でも、これが本当に大雅?

「よかった! あ、そういえばね。私今度の木曜日から旅行に行くんだよ」

さりげなく、大雅との旅行の話題を出してみる。

どんな反応をするのだろうか?

すると、

『へえ! もしかして四国ですか?』

そう訊かれて、私はびっくりしてしまった。

「え、なんでわかったの?」

コタローくんが大雅だから?

そう思ったのに、

『この間、竜馬がゆくの話をしてたからです』

成程、と思わざるを得ない返事が届いて、私の目論見は失敗に終わった。

やはり、文字のやり取りだけで真実を見抜くなんて、到底無理だ。
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