偽物の恋をきみにあげる【完】
「大事な話?」

「うん。瑠奈にどうしても言わなきゃいけないことがある」

そう言って、こちらを向く。

大雅の大きな猫目に、自分の姿が小さく映っていた。

なんだかそれがとても嬉しかった。

ずっとそこに映っていたいのに。

嬉しくて、切ない。

「……なに?」

「……前にさ、俺、お前のこと好きじゃないって言ったじゃん?」

「……うん、そうだね」

「でも、嫌いとかそういう意味じゃなくて……つーか瑠奈のことは、好きとかそういうんじゃない」

大雅は何を言っているのだろう。

『好きとかそういうんじゃない』

……あれ? もしかして。

私、今、大雅にフラれてる?

あとひと月後に来ると思っていた別れが、もうやって来ちゃったの?

思わず涙ぐみそうになって、見られないように慌てて下を向いた。

胸がきゅうきゅうと締め付けられて、苦しい。

心臓痛い。

離れたくない。

好きになってなんて、もう望んでないのに。

さよならは聞きたくないのに。

「頼むから、ちゃんと聞いて」

大雅はそんな私の顔を両手で挟んで、無理やり上を向かせた。

「あのね……







……愛してるよ、瑠奈」





えっ……今、なんて───。



あいしてる?
私を?



「めちゃくちゃ愛してる」

大雅は今度はくしゃっと笑ってそう言うと、私を思いきり抱きしめた。

驚いて見開いたままの私の瞳から、バカみたいに大量の涙がぶわっと溢れ出した。
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