偽物の恋をきみにあげる【完】
「ダメ。終電なくなる」

心を鬼にして、俺は素っ気なく言った。

「しゅーでん? うーん」

「明日、仕事だろ?」

俺の問いに、月奈はコクリと頷いた。

「じゃ、行こっか」

「うん。……あ、大河ぁ」

腰を浮かせた俺の腕を、月奈が引っ張る。

「ん? どした?」

「……やっぱやだ。一緒いたいもん」

月奈はそう言って、しょんぼりと俯いた。

ふう、とため息をついて、俺はまたベンチに腰を下ろした。

やれやれ、みたいなため息とは裏腹に、俺の口角は完全に上がってしまっていて、たぶんニヤついたキモい顔になっているに違いない。

「るーなちゃん」

そう言って顔を覗き込むと、しょんぼりしていた筈の月奈は、何故かとても嬉しそうに目を細めた。

「たーいがちゃん」

あ、真似した。

「なーに、るーなちゃん」

「ふふふふふ、たーいがちゃん」

「はいはい、なんですかー?」

「だーいすき!」

「なーに言って」

俺の口は、月奈の唇に塞がれた。

ぞわぞわと、甘い刺激が全身に伝わる。

──神様、助けて。

俺の理性が持ちません。
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