偽物の恋をきみにあげる【完】
──1時間後。

俺はまだ駅前広場のベンチに座っている。

ちなみに、身動きが全く取れない。

月奈が俺の膝枕で寝てしまったからだ。

俺にキスしたコイツは、えへへ、と笑いながら俺の足の上に半身を預けて、そのまますぐに寝息を立て始めやがった。

そういえば、どうして膝枕というのだろう。

絶対に膝ではなく太ももだと思う。

膝を枕にしたら痛いだろ。

……いや、そんなどうでもいいことを考えている場合じゃない。

終電はさっき行ってしまったし、どうしたらいいのだろう。

俺は明日から永久ニートだからいい。

でも、月奈は明日も朝から仕事な筈だ。

漫画喫茶にでも行く?

いや、この辺そういうのないし。

俺んち?

いや、うち実家だし。

じゃあ、タクシーで家まで送っていく?

いや、コイツの家がどこかなんて知らない。

でも、他にいい方法がない。

起こしてタクシー乗せて、自分で案内させるか。
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