偽物の恋をきみにあげる【完】
「及川さん、これからディナーでも」

「すいません、待ち合わせです、お先です」

今日も変わらず鬱陶しい平野主任の絡みを、五七五で華麗にかわして、私は早足で駅前に向かった。

大雅はもう先に着いて待っているはずだ。

1週間後はクリスマスイブ。

街路樹にはイルミネーションが施されていて、すっかり暗くなった街が光で滲んで見えた。

通りすがる店からは決まって、シャンシャンと鈴の音が聴こえる。

その様子はどこかしらノスタルジックで、クリスマスに大した思い出もないのに、センチメンタルな気分になるから不思議だ。

そう感じる光景は他にもある。

例えばサーカスとか夏祭りとか、あとは某有名テーマパークのパレードとか。

何故か胸を締め付けられて、不意に泣きたくなったりする。

最近その理由が少しだけわかった気がした。

きっと、儚いからだ。

あまりに楽しげで美しいその光景が、泡沫の儚い夢、幻のような気がして、切なくなってしまうのだと思う。

まるで大雅とのセックスみたい。

大雅とカラダを重ねる時間は、まるで夢みたいにあまりにも幸せだ。

そしてやっぱり夢だったかのように、跡形もなく消えてなくなる。
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