偽物の恋をきみにあげる【完】
駅構内の大きな柱にもたれかかった大雅は、何かの雑誌を読んでいた。

今日も相変わらず、通りすがる女性達の目を引いている。

「大雅、お待たせ!」

「わあっ」

大雅の顔と開いた本の間にひょいっと顔を入れて声をかけると、彼はとても驚いた声を上げた。

雑誌がばさばさと音を立てて落ちる。

「お前、びっくりさせんなよ」

「えー、そんなに驚かなくても」

「急に目の前にまるい顔が出現したらびびんだろ」

「顔まるいの関係ある? それ。無駄にディスってるよね」

落ちたそれを拾い上げようと屈むと、大雅が我先にと手を伸ばして拾い上げた。

そして、手早くくるっと丸めて、慌ててボディバッグの中に雑誌をしまい込む。

まるで隠したいみたいだ。

「ねー、何の雑誌読んでたの?」

「なんでもいいじゃん」

素っ気なく答えた大雅が改札を通り抜けたので、私も後を追った。

「あ、わかった! エロいやつ読んでたんだ!」

「なんで俺が今、こんな公衆の面前でエロ本読むんだよ?」

「テクニックのお勉強?」

「テクニック? ふーん。瑠奈は今の俺のテクじゃ満足してないと? へえー。あんなにアンアン言ってるのに」

「やだ、やめてー」

なんてくだらない会話をしていたら、「まもなく2番線に電車が~」というアナウンスが流れて、私達は慌ててホームに向かった。
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