偽物の恋をきみにあげる【完】
恋人ゴッコ? 絶対に本気にならない?

本当にそんな馬鹿げた約束をしたのだろうか。

「……ねえ、それほんとの話?」

「なんでこんな嘘つくんだよ。てか、まじで覚えてねんだな。だからあん時、あんなびっくりしてたのか」

「あん時?」

「俺があの日ホテル出たあと、次いつ会える? って言った時。瑠奈、目丸くしてたから」

……ああ、そうだったのか。

私はあの瞬間、てっきり初恋の続きが始まったと思ったのに。

始まったのは、偽物の恋だったなんて。

「ねえ、そもそもなんでそんな話になったの? こんなアホなこと、どっちが言い出したの?」

「……あとは自分で思い出しなよ」

大雅は呆れ顔で言った。

「なんで! 教えてよ」

「泥酔して約束忘れた罰。……それより、こないだのことだけど」

「……なに?」

「あんな言い方したのは悪かった。でも……」

大雅は一呼吸置いて、フォークを皿に置いた。

カチャンと無機質な音が鳴る。

「『好き』とか『愛してる』とかさ。言葉にしたら、本気になるから駄目だよ」

「……」

本気になったら、ちゃんと付き合えばいいんじゃないの?

そう言いたかったけれど、やけに真剣な大雅の顔を見たら、声にならなかった。
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