偽物の恋をきみにあげる【完】
大雅はいつも通り、10時に帰っていった。

普段ならこのタイミングでシャワーを浴びる私は、セックスしなかったせいかそれも忘れ、彼をきちんと玄関で見送ると、再びベッドに転がった。

大雅が転がっていた場所がまだ温かくて、なんだか少し切ない。

……それにしても、「恋人ゴッコ」なんて。

絶対に本気になってはいけない、ゴッコ遊び。

そっか、最初から、心なんて求めちゃいけなかったんだ。

私のこと好きなの? なんて訊いた上に、好きじゃないと言われて泣くなんて、大雅からしたら、ただのルール違反だ。

あーあ。

もし時間を戻せるなら、こんなバカげたことを始めたあの日の自分を、全力で止めたい。

本気になっちゃいけない恋愛なんて、何の意味があるのだろう。

意味がない、でも私は……。

「『好き』とか『愛してる』とかさ。言葉にしたら、本気になるから駄目だよ」

不意に、さっきの大雅の言葉が頭をよぎる。

もし本気になったら、この関係は終わり?

だとしたら、私は今の気持ちを、死んでも知られるわけにはいかない。
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