偽物の恋をきみにあげる【完】
ショーウィンドーに自分達の姿が映る。

私と大雅は恋人ゴッコなのに、キラキラした夜の街をこうして並んで歩いている様子は、きっと恋人同士にしか見えない。

変な感じだ。

駅から10分ほど歩いて、高級シティホテルが建ち並ぶ辺りに差し掛かった時、

「ね、あれ見て! すごくね?」

大雅が声を弾ませて、ホテルの中の1つを指差した。

「うわぁ! すごいキレイ!」

正面玄関の前に、薄紫色のイルミネーションに彩られた、とても美しい大きなクリスマスツリーが。

キラキラと輝くツリーのてっぺんには、赤く輝く2連ハートの形をした装飾。

他の部分にも、ハート型の電飾がいくつも飾られている。

ロマンチックなデザインにうっとりした。

「食事終わったら、またゆっくり見よっか?」

「うん! って、食事はどこでするの?」

「ここだけど」

「ええっ? こんな高級ホテルで!?」

驚いて声を上げれば、

「ま、俺からのクリスマスプレゼント。ちなみに泊まるのもここですよ」

得意げな顔で、大雅は笑った。

泊まるのもここ!?

てっきりラブホテルだと思っていたのに。

「すっごい嬉しい! ありがとう!」

「ま、大切なカノジョのためだからね」

本物の恋人じゃないくせに、大雅はそんなことを言った。

ずるい。
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