偽物の恋をきみにあげる【完】
「龍馬じゃないのか。んーじゃあ、みかん食べたいの?」

「なんで現地まで? 愛媛のみかんなんてその辺に売ってんだろ」

「愛媛県の蛇口からはポンジュースが出るらしいよ」

「……出るわけねーだろ?」

大雅が呆れた顔をした。

「あ、わかった! 阿波踊り!」

「時期な。今真冬。てか瑠奈、四国のことよくそんな知ってんね」

「私一応、大卒だし」

さっきの文学少年発言さながら、私もドヤ顔をして言ったものの、

「ふっ、俺だって大卒だし」

一笑に付されてしまった。

「つーかね、俺の生まれ故郷なの」

「え? 四国?」

「うん。1歳までだから覚えてないけど。だから、行ってみたいなって」

「自分の原点を知ろう、的な?」

「んーまあ、そんなとこ。……ね、瑠奈。一緒に行こっか?」

「えっ?」

驚いた私を他所に、大雅は話を進める。

「有休取れる?」

「えっ……取れるけどいつ? 春くらい?」

「……もっと早い方がいいな。今月末か来月頭」

「ずいぶん急だね! ま、大丈夫だけど」

私が答えると、

「じゃ、すぐ有休取ってね」

大雅は眉尻を下げてくしゃっと笑った。

突然、大雅と旅行することになるなんて。

今年は目まぐるしい1年になりそうだ。
< 88 / 216 >

この作品をシェア

pagetop