偽物の恋をきみにあげる【完】
いつも通り、傍らには缶ビール。

それを手に取ってぐびぐびと飲んだら、熱いシャワーでまだ火照ったカラダから、ようやく少しだけ熱が引いていく。

うちのシャワーは冬場、温度調節がどうも上手くいかない。

熱過ぎるかぬるいかのニブイチ。

まるで、大雅とコタローくんみたいだ。

火傷してしまうほどの熱湯と、心地いいけどカラダが温まりきらないぬるま湯。

そんなことを思う私は、なかなかの詩人だ。

小説を書くのはやめて、いっそポエマーにでもなろうかしら。

「そういえばコタローくん、竜馬がゆく、って読んだことある?」

コタローくんとちょうど本の話をしていたので、ふと思い出した私はそう尋ねた。

つい1、2時間前に大雅に抱かれていた私は、今はこうしてコタローくんとメールをしている。

たったの10分のシャワーで気持ちをリセットして、あまつさえ他の男との会話を平気で持ち出す私は、きっと頭がおかしい。

でも不思議なことに、コタローくんと話している私は、確かに、コタローくんのことが好きな私なのだ。

もしかして、私の中に私が2人いるのかしら? なんて思ったりする。
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