あの日勇気がなかった私たちは～卒業の日～

きのう教室で熟睡してしまってなんとなく一ノ瀬くんと気まずいから、残るのをためらっていた私だけれど、いざ勉強を始めると勉強に必死でそんなこと頭から抜け出ていた。


勉強に一区切り付け、教室をでる。
すこし眠くなってきたので、眠気覚ましもかねて一階の自販機まで歩いて行く。


「あ、これ新発売だーこれにしようかな」

「いいね、じゃあ俺もこれにしようかな」

「え？！」


横を見るとなぜか一ノ瀬くんがいた。
私が教室を出るときは勉強していたのに。

一ノ瀬くんがいることに驚いているうちに、一ノ瀬くんはさっさと私が買おうとしていたジュースを購入していた。それも二本。


「はい、あげる」

そのうちの一本を差し出され、戸惑う。

「え、いいよ。悪いからお金払う」

「気にしないで。俺が勝手に買っただけなんだから」

なんとかお金を受け取ってもらおうとしたのだが、一ノ瀬くんは頑として受け取ってくれなかった。
昨日といい今日といい、申し訳なさすぎる。

「そんなに気にするならさ、今から教室で話し相手になってよ。ちょっと休憩したいんだ」

「へ？そんなことでいいの？」

「うん。さあ、教室に戻ろ桜庭さん」