あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
それから一時間、少し勉強したり会話をしたりしながら時間をすごした。

下校時間になり、二人そろって昇降口へと行く。

「今日はありがとう」

「こちらこそ、ジュースも買ってくれてありがとう」


「じゃあまた明日」

「うん、ばいばい」

正門で別れを告げる。


一人で帰りながら、なんとなく今日のことを思い返す。
なんてことのない一日だと思っていたけれど、思いがけず濃い放課後だった。


(さすがになんで最近九重さんと帰らないのかは聞けなかったな)

そんなプライベートに踏み込んだことを聞けるような関係でもない。
私たちはたまたま今日しゃべっただけのクラスメイト。

ーーーそう、私たちはただのクラスメイト、卒業すれば会うこともないだろう。
このときはまだ、そう思っていた。
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