スイート ジャッジメント 番外編
ちぃちゃんに言われて改めて湊を見る。今日の湊は普段と表情が少し違う。あんまり笑わなくて、いつもより真剣な眼差しは、普段黙っている時から比較したって3割増しでカッコイイ。”戦闘モード”なんて呼び方はちょっと物騒だけど。
今日みたいな湊の表情は何度か見た事があった。だけどそれは試合なんかじゃなく、東海林先輩と話した時や友香さんと対峙した時に他ならない。それを思い出したら胸が痛くなる。
「前に見たことは……あったけど……」
すごくかっこいいけど……やっぱり普段のよく笑う湊の方が……好きかも。
「あたしも久々に見た。去年、とわとダメになってから、あいつ全然スイッチ入らなくなったから」
「え……?」
ちぃちゃんは、ちょっと意味深にふふっと笑った。
「桜庭にキャーキャー言ってる子達に教えてやりたいわぁ。あいつが本気でやってんの、自分の彼女が男友達と一緒に電車乗ってんのが不満だからだって」
ちぃちゃんの一連の解説に、美久ちゃんが苦笑い。
「いや、超カッコイイよ? その内情知らなかったら」
……知ったらガッカリするだろうけど、と言外に美久ちゃん。
私の知らないところでなんか変な話になってる。とりあえず、それだけは判った。