スイート ジャッジメント 番外編

 ちぃちゃんに言われて改めて湊を見る。今日の湊は普段と表情が少し違う。あんまり笑わなくて、いつもより真剣な眼差しは、普段黙っている時から比較したって3割増しでカッコイイ。”戦闘モード”なんて呼び方はちょっと物騒だけど。

 今日みたいな湊の表情は何度か見た事があった。だけどそれは試合なんかじゃなく、東海林先輩と話した時や友香さんと対峙した時に他ならない。それを思い出したら胸が痛くなる。

「前に見たことは……あったけど……」

 すごくかっこいいけど……やっぱり普段のよく笑う湊の方が……好きかも。

「あたしも久々に見た。去年、とわとダメになってから、あいつ全然スイッチ入らなくなったから」

「え……?」

 ちぃちゃんは、ちょっと意味深にふふっと笑った。

「桜庭にキャーキャー言ってる子達に教えてやりたいわぁ。あいつが本気でやってんの、自分の彼女が男友達と一緒に電車乗ってんのが不満だからだって」

 ちぃちゃんの一連の解説に、美久ちゃんが苦笑い。

「いや、超カッコイイよ? その内情知らなかったら」

 ……知ったらガッカリするだろうけど、と言外に美久ちゃん。

 私の知らないところでなんか変な話になってる。とりあえず、それだけは判った。

< 40 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop