スイート ジャッジメント 番外編
 本気でやる気満々のサッカー部はほとんど全員スクイズボトル持参で、更には1・2年生のマネージャーさんがしっかりクーラーボックスに氷まで準備してくれていた。ちぃちゃん曰く「今年のマネは二人とも甲斐甲斐しいわよねぇ……あいつらの下らないお祭り騒ぎに付き合ってあげて偉いわ。あたしだったらやらない」との事。

 湊も例に漏れず、私は腕に湊のスクイズボトルを抱えて試合を眺めていた。

「お疲れ様」

「ありがと」

 試合を終えて戻ってきた湊は、私からボトルを受け取る時は笑顔を見せつつも、直ぐに私の頭の上を若干鋭い視線で見る。そんな湊につられて振り返ると、私のすぐ後ろに武田が居た。

 私、後ろに武田が居るの気づいてなかったけど、いつから居たんだろう。試合中も居たなら、湊すっごくイライラしてたんじゃなかろうか。

「準決勝余裕とか言っといて4点差とか、結構ギリだったじゃん」

「お前とやんのに温存してんだよ」

「へぇ? 温存しすぎて負けんなよ?」

 私の頭上で交わされる2人の会話が怖い。だけど、事情を知った上で聞けばただのネタでしか無い二人の会話に、私の傍らでは、ちぃちゃんと美久ちゃんが肩を震わせて笑っていた。

 2人だけじゃない。低い声で交わされている湊と武田の会話が聞こえているサッカー部3年はことごとく失笑している。

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