スイート ジャッジメント 番外編
「ねぇ、湊。言いかけだと気になるんだけど」
「気にしなくていいよ。大したことじゃないし。電車混んでたらそりゃ、くっつかざるを得ないしね」
大したことじゃないと言いながらも、その表情と声音は物凄く拗ねている。
「それは、掴まるとこない事多いから、時々助けてもらってるだけで、そういうのじゃないよ。元々は私がしばらく学校行かなかったの……すごく心配してくれてたんだから」
文化祭の後、私が学校に行けずにいた時に、武田は若菜と一緒に1度家まで来てくれた。その時には、朝迎えに来るから一緒に行こうとも言ってくれていたけど、それは断った。
家まで来てくれて嬉しいと思えるのは……湊だけだったから。それに、あの日湊が迎えに来てくれたのを、武田で上書きなんてしたくなかった。
電車だって……乗れるものなら湊と乗りたいって、私は思っているんだから。
「そんなので喧嘩しないでよ」
「遊んでるだけだから大丈夫。負ける気一切ないけどね」
笑って私の頭を撫でる湊の表情は、どこか不敵で、やっぱり今日の湊はいつもとは少し違う。
「戻ろっか。武田負けてたら馬鹿にしてやんなきゃ」
「……」