スイート ジャッジメント 番外編
それにしても、湊が大会に出ることも出来なかったなんて。考えてもいなかった事実を聞かされて、ため息が漏れた。
少なくとも去年、私の知っている湊は大会でもスタメンだったし、夏休みだって私と会うことよりも部活を優先していた。去年の夏休み「会いたいけど部活だなぁ……」と湊が零すのを何度聞いたか。それなのに、あの件が原因で部活にも支障を出していたなんて。
「とーわ」
ぼんやりと湊を見ていた所に、急に若菜の声と共に頭になにか乗せられて何かと振り返ると、若菜が後ろに来ていた。
「若菜。何? これ」
多分、頭にカチューシャを着けられた。そう思ってそれを取ると、薄ピンクのオーガンジーの大きなリボンの付いたカチューシャ。小さなパステルカラーのフェルトのボールがいくつか中に入っているリボンには見覚えがある。と言うか、私も同じものを持っている。
「これ……」
「去年の。懐かしいでしょ」
ふふっと若菜が笑う。私の手にあるのは、去年の文化祭の時にクラスの女子で作ったお揃いのカチューシャだ。オーガンジーリボンの中にフェルトのボールでちょっとタピオカっぽいでしょ~? とクラスの子が笑っていたのも懐かしい。ただ、私と若菜は着けることなく文化祭を終えたけれど。